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Saturday, February 26, 2005

思い出話

アメリカで高校生をしていた頃の話。

家族みんなお寿司が好きなので、お寿司屋さんをすることが夢だった。母がオーナーとなって、一軒お店を立ち上げることになった。内装とか立地とか処理しな きゃならないことはたくさんあったけど、なによりも私たちにとって大切だったのは、腕のいい寿司シェフをやとうことだった。何人かちがう板前さんを面接し て(もちろん作ってもらうのだ。私と弟にとって至福の一週間。)から、ひとり決まった。その名も「マナさん」。

ニックネームの由来は定かではないが、天から降ってきたおいしいもの(聖書にあるマナ)だとか、メキシコ語の「手」、マノからだとか言われていた。背が高くて、男前で、職人気質なきっちりとしたお寿司を作る人だった。

ある夏、日本での仕事の処理をしなければならなくなった母を手伝って、お店でアルバイトをすることになった。私と、あとAngelaという母方のいとこ、 Claudioという父方のいとこと一緒に。私は日本語が通じるからということも手伝って、マナさんとすぐに仲良くなった。音楽が好きで(演歌だけど)、 自分でも作曲するんだというマナさんに、歌詞を書いて音楽をつけてもらおうとした。私の歌詞はフォークソング系で、とてもじゃないけどマナさんの感性に合 わなかったらしく、無理だ・・・、と言われた。(わたしの人生であれほど何度もテレサ・テンを聞いた時期ってほかにない。)

月に一度は私たちを連れて、店を閉めてから遊びに連れていってくれた。カラオケとか、おでん食べにいったりとか。レジの仕事になれなくて、いつも現金とクレジットカードと、レジの合計が合わなくなってしまう私に、ずっとつきあって、数字が合うまで待っていてくれた。

夏休みの後も、学校が終わるとお店にいって、開店の時間までおさしみの準備をするところを見ていた。母の様子を見に行くというのが口実で、実はマナさんと おしゃべりしたかったのだ。カウンターの隅で宿題などをしていると、ときどき、海草とあまったおさしみで作ったサラダとかを、ぱぱっと作ってこっそりくれ ていた。

わたしの父はそのころ単身赴任のようなかたちで日本に離れて暮らしており、マナさんには事情があって会うことのできない娘が日本にいた。わたしと同い年くらいだったらしい。「父」という存在が欠けていた時期に、少しだけ、甘えさせてくれる相手だったのだ。

結婚式の日に、2時間かけて運転して式に参加してくれた。他に一緒にくる友達もいないのに、30分も前についてしまって、ひとりでポツンと教会に座ってい た。ポツンといっても背が高いので、ものすごくめだってしまうのだけど。すごく早く来て、ずっと嬉しそうにニコニコしていた。

1週間前に突然亡くなったというニュースを、母からの電話で知った。肝臓癌の手術を受けた直後だったという。わたしは、病気になっていたことも知らなかった。何もしてあげることができなかった。

15年くらい知り合っていたけど、本当に近かったのは、あのアルバイトした夏だけだった。こんなにちょっとしか知り合っていない人が、いなくなって、それ でもこんなに悲しいっていうことが、怖いくらいだった。私には友達がたくさんいて、そのひとりひとりがいなくなるときに、ずっとこんな気持ちになるんな ら、友達、少ないほうが良かったかも・・・とまで思った。

でも、やっぱり、人と人が出会って、一緒に色んなことをして、その時はなんとも思わないことでも、後から大切になるんだ。そう思ったら、自分の毎日と、時間と、周りにいる人が、もっと大切になった。

1 comment:

Mary Chikagami said...

おお、初コメント。うれしいいい。
いったい何人の人に読まれているのかまったくわからない、ひとりごと的なところに(しかも毎日じゃないし)来てくれてありがとう・・・。

マナさんはきっと本当にたくさんの人に覚えられていると思う。ありがとうね。